「スクエニはセールでも高い」――。
2024年6月、5chでこんな話題が盛り上がっていました。
比較対象として何度も名前が挙がったのがカプコン。『バイオハザード』や『モンスターハンター』などの旧作を大幅に値下げし、長期間販売していく戦略に対して、「スクエニも同じように旧作を安く売った方がいいのでは?」という議論です。
あれから約2年。当時は単なるメーカーへの文句にも見えたこの議論ですが、その後のスクウェア・エニックスとカプコンの動きを確認すると、意外と興味深い違いが見えてきます。
「スクエニはセールでも高い」と5chで議論
当時のスレッドでは、『FINAL FANTASY XV』などを例に、スクエニ作品のPC版やセール価格について不満の声が上がっていました。
「スクエニはセールでも高けぇんだわ」
「FF15 STEAMマジに高杉 PS4版なんて1000円以下なのに」
一方で、「安くすれば売れるという単純な話ではない」という意見もあります。
「シングルのゲームはプレイヤー数増やすより 客単価のが大事だから ワンコインばらまきとかやらない方がいい」
「売れないゲームって安かろうが売れないから」
つまり議論になっていたのは単純な割引率だけではなく、「価格を維持して1本あたりの収益を重視するのか」「大幅に値下げして販売本数と新規ユーザーを増やすのか」という販売戦略の違いでした。
比較されたのはカプコンの「旧作を長く売る」戦略
スレッド内で特に比較対象となっていたのがカプコンです。
「カプコンは世界中に売る戦略だぞ 高い値段じゃ買われない国を捨てるのと一緒 新興国には古くて低スペで動くゲームをプロモーションしてるそうだ」
「6000万本売ってるスカイリムや ウィッチャー3はセールの常連だからだぞ ばら撒きもやるから新作も売れる好循環 モンハンのカプコンも同じ売り方」
当時は5chユーザーによる分析でしたが、その後カプコン自身がかなり具体的に価格戦略を説明しています。
カプコンは2025年の統合報告書で、新作を60~70ドル程度で販売した後、市場価値に応じて段階的に価格を下げ、最終的には10ドル、場合によっては5ドル程度まで下げるという基本的な価格戦略を説明しています。
単年度ではなく約5年間で販売本数と利益を最大化する考え方で、開発費についても通常1~2年程度で回収し、その後は値下げしても利益への貢献が可能だとしています。
実例として挙げられているのが『モンスターハンター:ワールド』です。
『モンスターハンターワイルズ』の発表に合わせて『ワールド』を9.99ドルまで値下げ。その後も販売を伸ばし、現在ではカプコンの年間ソフト販売本数の7割以上をカタログタイトルが占めるまでになっています。
「価格よりゲームそのものでは?」という意見も
ただし、当時のスレッドでも「安くすれば解決するわけではない」という意見は少なくありませんでした。
「ほんのりでも気になっていたゲームがセールで安いと 思わず衝動買いしたりするけど スクエニの場合は金額の問題ではない気がするわ」
「まず値引き無しである程度売らんと」
これはゲームの価格を考えるうえで重要なポイントです。
同じ50%OFFでも、もともと欲しかったゲームなら「半額なら買おう」と感じます。一方、作品そのものに興味を持たれていなければ、大幅に値下げしても購入には結びつかない可能性があります。
価格だけではなく、作品への評価、ブランドへの信頼、新作への期待などが組み合わさって、ユーザーが感じる「お得感」は変化すると考えられます。
実はスクエニ自身も2024年に方針転換を発表していた
興味深いのは、この5chスレッドが立った2024年の直前に、スクウェア・エニックス自身も大きな方針転換を発表していたことです。
スクウェア・エニックス・ホールディングスは2024年5月、新中期経営計画「Square Enix Reboots and Awakens」を発表。
それまでの計画について、HDゲームを中心としたデジタルエンタテインメント事業の収益性改善などに課題が残ったと総括し、開発について「量から質へ」の転換を打ち出しました。
同時に、主要IPやAAAタイトルについてマルチプラットフォーム展開を推進し、より多くのユーザーが遊べる環境を整える方針を表明。
さらに、過去作品を含むカタログタイトルについても販売を強化し、安定した収益基盤につなげる方針を明確にしています。
2年後、スクエニもカタログ販売を強化
その後のスクウェア・エニックスは、実際にPCを含めたマルチプラットフォーム展開を拡大しています。
2025年の進捗報告でも、新作とカタログタイトルを組み合わせたバンドル販売や、デジタル販売を促進するセール施策などによって、カタログタイトルの販売が伸びたと説明しています。
つまり、2024年の5chで語られていた「過去作品をもっと広く、長く売った方がいいのでは」という方向性については、スクエニ自身もカタログ販売の強化という形で動き始めているわけです。
もちろん、これだけでスクエニとカプコンの価格戦略が同じになったとは言えません。
カプコンは価格を段階的に下げながら長期間販売する戦略をかなり明確に説明しているのに対し、スクエニはマルチプラットフォーム化、デジタル販売、バンドル、プロモーションなどを組み合わせてカタログ販売を強化しています。
GAME速AI分析
ゲームのセール価格は、単純に「安ければ正解、高ければ失敗」と判断できるものではありません。
価格を大幅に下げれば1本あたりの売上は減りますが、購入者が増えることでシリーズへの入口を作ることができます。特にシリーズ作品の場合、安価な旧作から入ったユーザーが新作を購入するという循環を作れる可能性があります。
カプコンの戦略が興味深いのは、旧作の値下げを単なる在庫処分ではなく、新作のマーケティングと連動させている点です。『モンスターハンター:ワールド』を『ワイルズ』の発表と合わせて低価格で販売した事例は、その考え方を分かりやすく示しています。
一方、価格を下げても作品への関心そのものが低ければ販売増加には限界があります。
ユーザーが感じる「高い」「安い」は定価や割引率だけで決まるものではなく、ゲームの評価、シリーズへの期待、メーカーへの信頼、発売から経過した時間、競合タイトルの価格などによっても変化します。
その意味では、スクエニが掲げた「量から質へ」という方針と、カタログタイトルの販売強化は別々の問題ではありません。
新作への満足度を高め、その作品を数年後まで売り続けられる状態を作ることができれば、大幅なセールも新規ユーザー獲得のための武器になります。
逆に、作品そのものへの評価が十分でなければ、価格だけを下げても長期販売につながるとは限りません。
2024年の5chで行われていた「スクエニもカプコンを真似して安くすればいい」という議論は、実際には価格だけではなく、「発売したゲームを何年間、どのように価値ある商品として売り続けるのか」という問題だったとも考えられます。
まとめ
2024年6月、5chでは「スクエニはセールでも高い」という不満をきっかけに、カプコンとの販売戦略の違いが議論されていました。
その後カプコンは、旧作を段階的に値下げしながら長期間販売し、新作への入口としても活用する価格戦略を公式に説明。カタログタイトルは年間販売本数の7割以上を占めるまでになっています。
一方のスクウェア・エニックスも2024年から「量から質へ」を掲げ、マルチプラットフォーム展開とカタログタイトルの販売強化へ方針を転換しました。
2年前には単なる「セールが高い」という文句に見えた5chの議論ですが、現在から振り返ると、ゲームメーカーが旧作をどのように長期販売するのかという重要なテーマを含んでいたと言えそうです。
管理人コメント
私はスクエニのセール、やっぱり高く感じますね。
それにリマスターやアップグレード版などでも結構いい値段で出してくる印象があるので、それも重なって余計に「高いな」と感じてしまいます。
ただ、これって単純に割引率だけの問題じゃない気もするんですよね。ここ数年のスクエニに対してユーザー側に溜まっているフラストレーションも、多少影響しているんじゃないかなと。
例えばフルプライスで買って「これは大満足だった!」と思えるゲームなら、少し値下げされただけでも「この値段で買えるならお得じゃん」と感じます。
逆に、そもそもゲーム自体の評価がいまひとつだった作品が、何年か経ってセールになってもまだ結構いい値段だったら、「いや、まだ高いよ(笑)」ってなっちゃう。
結局、ユーザーが感じる「高い・安い」って、定価や割引率だけじゃなくて、そのゲームやメーカーにどれだけ価値を感じているかもかなり大きいんじゃないでしょうか。
情報元
スクウェア・エニックス・ホールディングス「2024年3月期 ステークホルダーの皆様へ」
スクウェア・エニックス・ホールディングス「前中期経営計画の総括」
スクウェア・エニックス・ホールディングス「中期経営計画1年目の取り組み」
カプコン「COOが語る成長戦略 2025」
5ch – 元スレッド


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