ソニーミュージックが運営するVTuberプロジェクト「VEE」が、2026年9月30日をもって現行のプロジェクト運営と所属タレントのマネジメントを終了します。
VEEは2021年、「史上最大規模のバーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト」としてスタートしました。
当初掲げていた目標は、50名を超えるバーチャルタレントのデビュー。
ソニーミュージックが持つ音楽・映像・イベントなどのノウハウを活用し、VTuberの夢を支援する大規模プロジェクトとして始まりました。
しかし約5年後、運営は「持続可能な事業として運営を継続していくことは困難」と判断。
なぜ大手エンターテインメント企業による大規模VTuberプロジェクトでも、継続することができなかったのでしょうか。
今回はVEEのスタートから終了までを振り返りながら、VTuber事務所を長期的に運営する難しさについて考えます。
VEEが2026年9月30日で現行体制を終了
VEEは2026年8月31日、同年9月30日をもって現行のプロジェクト運営および所属タレントのマネジメントを終了すると発表しました。
公式発表では、その理由について、現在の体制を維持したまま持続可能な事業として運営を継続することが困難だと判断したと説明しています。
さらにVEEは、タレントの夢を支えながらファンに楽しんでもらえる活動や作品を生み出し、それを継続可能な事業にすることを目指していたものの、その仕組みを十分に確立できなかったとしています。
そして、この結果について「所属タレントの責任ではなく、VEE運営の責任」であることも明確にしています。
単に所属タレントの人気などを理由にした発表ではなく、事業として持続可能な運営モデルを構築できなかったことを運営自身が認めた形です。
始まりは「史上最大規模」のVTuberプロジェクト
VEEが発表されたのは2021年7月。
ソニーミュージックは当時、VEEを「史上最大規模のバーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト」として発表しました。
目標として掲げられたのは、50名を超えるバーチャルタレントのデビューです。
配信や動画だけではなく、音楽、声優、創作など、それぞれのタレントが持つ夢を実現するための活動を展開するとしていました。
さらに、ソニーミュージックグループがエンターテインメント事業で培ってきたノウハウや環境を活用してタレントを支援するという、かなり大きな構想でした。
オーディションには1万8000人が応募
VEEのオーディションには約1万8000人が応募しました。
その中から2022年に第1弾となる5人が発表され、その後も段階的にタレントが活動を開始しました。
ソニーミュージックという企業の知名度に加え、「史上最大規模」という構想もあり、スタート時には大きな期待を集めていたことが分かります。
それだけに、約5年で現行プロジェクトの終了という結論になったことは、当初の構想から考えると大きな方向転換と言えるでしょう。
「大企業ならVTuber事業に成功できる」とは限らない
VEEの終了から見えてくるのは、VTuber事業が単純に資本力だけで成功する市場ではないということです。
ソニーミュージックには音楽制作、ライブ、イベント、映像、グッズ、アーティストマネジメントなど、エンターテインメント分野でさまざまな経験があります。
VEEでも実際に配信だけでなく、音楽、ライブ、イベント、グッズ、ファンコミュニティなど幅広い活動が行われてきました。
それでも運営自身が、持続可能な事業として継続する仕組みを十分に確立できなかったと説明しています。
企業の規模や知名度だけでは、VTuber事業を長期的に成立させられるとは限らないことを示す事例の一つと言えそうです。
VTuber事務所には何が求められる?
VTuberというコンテンツには、一般的な商品とは大きく異なる特徴があります。
視聴者が応援しているのは企業名だけではなく、日々配信や動画、音楽活動などを続けている一人ひとりのタレントです。
YouTubeなどを使えば個人でもVTuber活動を始めることができるため、事務所側には「所属することで個人活動では得にくい何を提供できるのか」が求められます。
配信環境や技術支援だけでなく、プロモーション、企業案件、音楽制作、イベント出演、グッズ展開、権利管理、活動上のサポートなど、事務所だからこそ提供できる価値が必要になります。
そして、それらをタレントの活動を支えながら事業として成立させる必要があります。
タレントを増やすことと、所属する一人ひとりを長期的に成長させる仕組みを作ることは、必ずしも同じではありません。
「50人超」という規模は正解だったのか
VEEはスタート時、50名を超えるバーチャルタレントのデビューを目標としていました。
大人数のタレントが所属すれば、さまざまな個性を持つ人材を展開できる一方、一人ひとりの活動を支えるために必要な人員やコストも増えていきます。
ただし、今回の公式発表では「50人超を目指したこと自体が終了の原因だった」と説明されているわけではありません。
そのため、当初の人数目標が正しかったのか、少人数から拡大する方が良かったのかについて外部から断定することはできません。
それでも「史上最大規模」を掲げたプロジェクトが持続可能な仕組みを確立できなかった以上、どのような規模で事業を始め、どの段階で拡大するべきだったのかは考える余地があります。
開発中だった『Gun Girl Go』も中止へ
VEEの終了による影響は、所属タレントのマネジメントだけではありません。
VEEは開発を進めていたゲーム『Gun Girl Go』についても開発を中止し、発売を見送ることを発表しました。
ファンコミュニティ「VEELLAGE」は9月30日にサービスを終了。
VEEオフィシャルショップも11月30日で販売を終了する予定です。
公式YouTubeチャンネルやSNSについては、YouTubeは当面アーカイブとして公開される予定で、SNSはプロジェクト終了後に原則として更新を終了します。
つまり今回の発表は、単にVTuberの所属事務所がなくなるというだけではなく、VEEというブランドを中心に展開されていた複数の事業やサービスにも影響する大きな終了となっています。
一方で20人は活動を継続
今回の終了発表で特に重要なのが、所属タレントの今後です。
公式FAQによると、所属タレントのうち20人は活動を継続する予定で、雛星あいるさんは活動を終了します。
そして活動継続を希望するタレントについては、原則として現在の活動名、キャラクター、YouTubeチャンネル、SNSアカウントを引き継げるよう移行が進められています。
今後は本人の希望に応じて、個人で活動を続けたり、新しい事務所や運営体制へ移ったりすることになります。
VTuberにとって「名前とチャンネルを残せる」意味
この対応は、今回のプロジェクト終了を考えるうえで重要なポイントです。
VTuberにとって活動名やキャラクター、YouTubeチャンネル、SNSは、単なる会社の資産というだけではありません。
長期間の活動によって動画や配信が蓄積され、登録者やフォロワーとの関係が作られていきます。
プロジェクト終了と同時にそれらをすべて失えば、新しい場所で活動を続けるとしても大きな再スタートを強いられる可能性があります。
VEEはプロジェクト発足時から、タレントの名前やキャラクター、積み重ねてきた活動を本人のキャリアとして尊重する考え方を掲げていました。
プロジェクト終了時にもその方針を維持し、活動基盤を可能な限り引き継げるようにした点は、事業終了そのものとは分けて評価する必要があるでしょう。
VTuber事業は「人のキャリア」を扱っている
VTuber事業を考える際に忘れてはいけないのが、キャラクターの向こう側には実際に活動している人がいることです。
新しい商品やサービスであれば、事業が成立しなければ販売を終了するという判断は珍しくありません。
しかしタレントマネジメントの場合、事業の終了は所属する人たちの活動やキャリアにも直接影響します。
だからこそ、事業を始める側には短期的にタレントを集めてデビューさせるだけではなく、どのように成長を支え、収益につなげ、長期間活動できる環境を作るのかという視点も必要になります。
もちろん、どれだけ計画を立てても新規事業が必ず成功する保証はありません。
挑戦した結果として撤退すること自体を否定することはできませんが、人の活動を支える事業だからこそ、始める段階から終了する可能性まで含めた設計がより重要になります。
ネット上では厳しい反応も
元スレッドでは、VEE終了についてソニーのVTuber事業そのものを揶揄する書き込みや、所属タレントの知名度について厳しく評価する反応が多く見られました。
しかし、VEE自身が今回の終了について「所属タレントの責任ではなく、VEE運営の責任」と明確にしています。
そのため、個々のタレントを責めることで今回の事業終了を説明するのは適切ではないでしょう。
むしろ注目すべきなのは、ソニーミュージックという大手企業が「史上最大規模」を掲げて始めたプロジェクトでも、持続可能なビジネスモデルを作ることができなかったという点です。
GAME速AI分析
VEEの終了を単純に「VTuber事業に失敗した」で終わらせると、この事例から見える重要な問題を見落としてしまいます。
まず、企業の資本力とタレントビジネスの成功は必ずしも一致しません。
VTuberは設備や広告に投資すれば自動的にファンが増える商品ではなく、タレント自身が長期間活動し、視聴者との関係を積み重ねることで価値が生まれていく側面があります。
そのため運営には、タレントをデビューさせる力だけでなく、何年にもわたって成長を支援しながら、活動を継続できる収益構造を作る能力が求められます。
VEEは音楽、ライブ、イベント、グッズ、ファンコミュニティ、さらにゲーム開発まで活動領域を広げました。
それでも運営自身が「持続可能な事業として継続する仕組みを十分に確立できなかった」と説明しています。
外部から具体的な収益構造や意思決定の過程を確認することはできないため、何が最大の原因だったのかを断定することはできません。
しかし、2021年に「史上最大規模」「50名を超えるデビュー」という大きな構想を掲げてスタートした以上、事業規模をどのように拡大し、それをどのように持続可能な形へ結び付ける予定だったのかは、今回の終了を考えるうえで重要な論点です。
そしてVTuber事業では、撤退方法も通常の商品以上に重要になります。
プロジェクトが終了しても、そこで活動していたタレントのキャリアまで終了する必要はありません。
今回VEEが、活動継続を希望するタレントに活動名、キャラクター、YouTubeチャンネル、SNSアカウントを原則として引き継げるようにしたことは、事業終了によるダメージを抑える対応として評価できるでしょう。
VEEの事例から見えるのは、「大企業がVTuberを始めれば成功する」という単純な世界ではなく、人を育てながら事業として長期間成立させることの難しさです。
今後VTuber事業へ参入する企業にとっては、デビュー人数や最初の規模だけではなく、「所属したタレントが5年後、10年後にどう活動しているのか」まで考えた仕組みづくりが重要になるのではないでしょうか。
まとめ
ソニーミュージックのVTuberプロジェクト「VEE」は、2026年9月30日をもって現行のプロジェクト運営と所属タレントのマネジメントを終了します。
2021年には「史上最大規模」を掲げ、50名を超えるバーチャルタレントのデビューを目標にスタートしました。
しかし約5年後、運営は持続可能な事業として継続することが困難と判断し、その仕組みを十分に確立できなかったことについて運営側の責任だと説明しています。
大企業の資本やノウハウがあっても、タレントを長期間育成しながらVTuber事業を成立させることは簡単ではないことが分かります。
一方、活動を続ける20人については、原則として現在の名前やキャラクター、YouTubeチャンネル、SNSアカウントを引き継いで活動できるよう移行が進められています。
事業終了については検証すべき点が残りますが、そこで活動してきたタレントのキャリアまで一緒に失わせない対応については、別の問題として評価すべきでしょう。
管理人コメント
正直、ソニーはこれまでもさまざまな新規事業やサービスを立ち上げては終了してきた印象があるので、今回のVEEについても、最初から「どうすれば事業として成功し、長く続けられるのか」というところまで十分に見通せていたのかは気になります。
新しい事業に挑戦して、結果的にうまくいかなかったから撤退すること自体は仕方ないと思います。ただ、VTuber事業は物やサービスだけを扱っているわけではありません。そこには実際に活動しているタレントがいて、その人たちのキャリアや生活にも関わっています。
「史上最大規模」を掲げてスタートしたプロジェクトが、約5年で持続可能な事業として継続できないという結論になったことについては、個人的にはかなり厳しく見ています。
これだけ大きな構想で人を集めるのであれば、短期間の結果だけではなく、タレントをどう育て、どう収益につなげ、長期的に活動できる場所を作るのかまで考えたうえで始めてほしかったです。
一方で、今回の終了にあたって、活動を続けたいタレントが原則として現在の活動名やキャラクター、YouTubeチャンネル、SNSアカウントを引き継いで活動できるようにした点は評価したいです。
プロジェクト終了と一緒に、それまで本人たちが積み上げてきたものまで失わせる形にしなかったことは救いだと思います。
事業としてのVEEは終わっても、そこで活動してきた人たちまで終わるわけではないので、これからそれぞれの場所で活動を続けていってほしいですね。
情報元
VEE公式
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